コラムCOLUMN

ジョブ型雇用とは?

スカウト スタッフ

<<目次>>

①ジョブ型雇用ってなんですか?
 
②ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用
 *メンバーシップ型雇用とは?
 *ジョブ型雇用とは?
 *ジョブ型雇用の広まった経緯

③ジョブ型雇用にすればすべて解決!とはなりません
 *デメリット①雇用の不安定化
 *デメリット②教育機会の喪失
 *デメリット③成果主義・個人主義が行き過ぎることも…
 *万能ではないジョブ型雇用

④世界のジョブ型雇用
 *<ドイツ>職業訓練の充実
 *<アメリカ>コロナ禍での失業率は14.7%(2020年4月)
 テクノロジーが可能にするタスク型

雇用システムには変化が求められている

<まとめ>ジョブ型は食べ物に似ている

①ジョブ型雇用ってなんですか?

新型コロナウイルスの流行に伴って、急速に広がったリモートワーク。程度や期間の差はあれど、この半年の間でたくさんの人々が、リモートワークを体験し、その便利さと不便さを体感したかと思います。世間にリモートワークが浸透していくにあたり様々な体験談が漏れ聞こえてきましたが、中でも多かったのが業務の評価や仕事ぶりに対しての戸惑いの声でした。
例えば、「部下が仕事をしているのか分らない」、「上司に仕事をしてないと疑われたらどうしよう」、「でもちょっとくらいならゲームしてもばれないかな」などなど……やはり仕事をしている姿が見えないと仕事ぶりを評価しにくいのでしょう。そんな不安・不満に呼応するように至る所で唱えられたのが「ジョブ型雇用」という謎の単語でした。
はて、「ジョブ型雇用」ってなんだろう? 流行りのスイーツですかね?早速、調べてみましょう。……なるほどね。結論から言うと「ジョブ型雇用」は食べ物ではありませんでした。飲み物でもありません。ジョブ型雇用とは、仕事の評価を成果で行う欧米流の雇用システムの事でした。


②「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」

ジョブ型雇用とセットで語られるのがメンバーシップ型雇用です。(※メンバーシップ型雇用も食べられません) 先にも述べたようにジョブ型雇用が欧米流なら、メンバーシップ型は日本的な雇用システムです。さて、日本と欧米で何が違うのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

メンバーシップ型雇用とは?

日本的なメンバーシップ型雇用とはどんな雇用の仕方なのか。入社からの基本的な流れを見てみると、まずは新卒一括採用で入社、社内で様々な仕事を経験しながら成長し、社歴に応じた昇給があって、定年まで勤め上げていく。
このような従来の日本的な終身雇用制度(期間の定めのない雇用関係)に基づいた雇用システムをメンバーシップ型雇用と呼んでいるわけです。ジョブ型雇用と比較する上で一つポイントをあげるなら、メンバーシップ型は長期的な雇用を前提にしたシステムということ。

ジョブ型雇用とは?

一方、欧米的なジョブ型雇用とはどんな雇用の仕方なのか。終身雇用ではなく、業務内容や労働時間、勤務地を定めた職務記述書(ジョブディスクリプション)に基づいての契約となります。将来性などではなく現時点で何が出来るかが最も重要視されます。
職務ごとでの契約なので基本的な業務はずっと同じ。また、その職務がなくなれば契約も終わり。ということがほとんどらしいです。だから、アメリカの場合、ジョブ型で働く人は転職を前提に職務についている人が多く、だいたい3年を目途にみなさん別の仕事・職場に移っていくそうです。
ポイントは職務記述書で職務を元に契約が結ばれるということ。業務内容等がはっきりと明示されているので転勤や定められた範囲外の業務を求められることは基本的にはありません。また終身雇用ではないので、例えば能力不足で解雇ということも珍しくありません。
このように対比して語られる二つの雇用システムですが、個人的に一番しっくりきたのが、メンバーシップ型雇用は「会社に勤める」もう一方のジョブ型雇用は「仕事に勤める」というイメージ。

ジョブ型雇用が注目を集める経緯

当然、会社に勤めるからこそのメリット・デメリット仕事に勤めるからこそのメリット・デメリットがそれぞれあります。
ここのところジョブ型雇用に対しての賛同の声が特に目立つようになったのは、日本の雇用システムが元来内包していた終身雇用の崩壊や生産性の向上などの問題がコロナ禍で悪化し、現状の【不安】へ繋がったというのがひとつ。もう一つはリモートワークの拡大によって従来の評価システムへの【不満】が高まったという見方も出来るのかなと思います。
「業務を評価する」という行為に、する側・される側の両者が疲れてしまい、職務記述書に基づいた評価の基準が明確なジョブ型がとても良いものに見えた。ジョブ型を礼賛する背景に、個人的にはそんな空気も感じています。
まとめると、元々ガタの来ていた従来のメンバーシップ型雇用がコロナ禍によっていよいよ機能不全の様相を呈してきた。そんな折に、年功序列の非効率さや、業務の評価・監視から自由になれるジョブ型雇用がもてはやされるようになった。
確かに、メンバーシップ型よりもジョブ型の方が優れている面はあると思います。でも、ジョブ型雇用だって万能な仕組みではないみたいです。


③ジョブ型雇用にすればすべて解決!とはなりません

デメリット①雇用の不安定化

ジョブ型雇用の場合、まず、雇用が安定しにくくなります。職務によっての雇用なので、職務がなくなれば雇用契約が終わります。なので、メンバーシップ型の様に手厚く雇用は守らない場合があります。

デメリット②教育機会の喪失

また、ジョブ型雇用では即戦力が求められるのでこれまでは企業が担っていた新卒生などの人材育成が行われなくなる可能性もあります。
生活の基盤となる雇用において、安定性と教育の機会が失われるこれらのデメリットは決して小さくありません。

デメリット③成果主義・個人主義が行き過ぎることも…

また、ジョブ型のメリットとされる評価や生産性の向上についてはどうでしょうか。
もちろん、職務記述書で業務内容をしっかり明記するので、特定の業種や業務であったり、働き方(例えば、複業)によっては目論み通りの成果を得られる可能性はかなり高いとは思いますが、全ての職種にこのジョブ型が適しているわけではありません。
例えば、どうしても個人重視になってしまうのでチームであたる仕事にはマッチしにくいし、開発などの失敗が前提の業務に関しても成果を重視しすぎて冒険ができない……など基本的には明記された職務以外は仕事と見なされないので評価システムへの【不満】がジョブ型に移行したところで解消されるかは場合によってかなり異なってくるかと思われます。

万能ではないジョブ型雇用

*生産性を向上させる。 
*成果に基づいて評価を下す。

この二点は雇用において、とても大事な部分だと思います。

そして現状のメンバーシップ型雇用では、上記の二点を大きく阻害しているケースは少なくないと思います。もちろんコロナ禍やテレワークにより不安・不満が高まりその解消をジョブ型雇用に求めてしまうのはとても理解できます。ただ、以前、ジョブ型雇用と似たような制度で成果主義がやたらともてはやされていた時期がありましたが、似たようなデメリットを解消できずにあまり浸透しませんでした。
こういった経緯を見るにつけて雇用システムに関しては、とりあえず始めてみようの見切り発車が失敗に終わる可能性は低くないと思います。特に、ジョブ型への切り替えで起こり得る雇用の不安定化や職業訓練の機会損失は貧困の再生産、階層の固定化、格差の拡大化などに繋がるおそれもあります。
言うまでもなく多くの人間にとって仕事が生活の基盤をつくります。今の世界においては【就業】とはそれ程にも大きな役割を担っています。だから、安易にジョブ型雇用に舵を切りすぎるのも得策とは思えません。雇用システムをメンバーシップ型からジョブ型へと移行するならば何のためのジョブ型雇用なのか、本当に実現できるのかをしっかり熟考する必要があるはずです。



世界のジョブ型雇用

ジョブ型は欧米の働き方を手本にしています。なので、ジョブ型について考えるにあたって欧米の現状は参考になるはずです。

<ドイツ>職業訓練の充実

ジョブ型雇用が浸透しているドイツでは、職業教育制度がしっかりしています。教育の段階から手に職を身につけられるような学校制度を設けていたり、企業も職業訓練生を積極的に雇って、知識・技術を習得する場を作っていたりなど、ドイツは即戦力を求めるジョブ型雇用でありながら専門性の高い職業人が育つ土壌があります。
これはドイツの国民性によるところもあり、職業教育を企業の社会貢献、雇用を社会福祉と考えるなど、国全体で人材育成に取り組むのが当たり前の環境にあることが大きいと言われています。ジョブ型雇用のデメリットの一つに職業訓練の機会損失があげられますがこのような仕組み・制度が社会に内在していれば、十分にカバーできます。

<アメリカ>コロナ禍での失業率は14.7%(2020年4月)

米労働省の発表によると2020年4月のアメリカの失業率が14.7%へ急上昇。コロナウイルスによる景気の悪化、仕事の消滅によりたくさんの人が職を失いました。ジョブ型雇用は業務毎での契約となるので、仕事がなくなれば雇用は終わります。メンバーシップ型で会社に雇われる日本の正社員と違い解雇するのは簡単です。
デメリットとして雇用が安定しないとされるジョブ型ですが、特このような非常時になると、就労者はあっという間に解雇されてしまいます。もちろん日本でジョブ型が始まってもアメリカのようになるとは限りませんが、職務記述書に基づく雇用は、雇用主が就労者を景気の調節弁として扱いやすく、雇用主に有利で、就労者には不利になりやすい雇用形態と言えそうです。

テクノロジーが可能にするタスク型

現在、欧米ではジョブ型という働き方からより限定的な業務で雇用するタスク型への移行も模索されています。タスク型で真っ先にイメージされるのは、ウーバーイーツあたりでしょうか。ウーバーイーツのような業務毎に単発で仕事を請け負うような働き方ギグ・エコノミーとも言われています。また、ウーバーイーツはアプリを介してワークをマッチングしていますが、こういったワークの仕方はプラットフォームエコノミーと呼ばれています。
見知らぬ横文字が更に行き交い始めてきましたね。何の話かといいますと、欧米ではテクノロジーの進化によってジョブ型という働き方が古くなり始めたという声があがっているってことです。
情報通信網が高速化された結果、仕事を更に細分化してタスク毎に外部に放流できるようになりました。雇用をより即席で単発なものにできるようになったことは働き方・雇い方の形に大きな変化をもたらしはじめています。このように欧米でのジョブ型を見てみると社会の制度、環境の変化、テクノロジーの進歩によって見え方や形が変わってくることが分かります。


雇用システムには変化が求められている

コロナ禍の長期化、テクノロジーの進化、高齢化、人口減少など……、今後世界はよりスピーディーに、よりも大きく、形を変えていくことが考えられます。それにあわせて働き方を考えるのはとても大切なことです。ただそれは既に存在している働き方をそのまま取り入れるのではなく、既存の働き方を解体していくつものパターンに再構築していく、あるいは状況に合わせた未知の働き方を発明する。「新しい働き方」を考えるというのはおそらくそういう事だと思います。
従来のメンバーシップ型に限界が見えた以上は、新しい雇用システムは検討すべきです。検討するにあたってジョブ型のように生産性を向上させ、公平に評価を下せるものを目指すのも間違った選択ではないと思います。
ただ、それは欧米のシステムをそのまま持ってくるのではなくて、しっかりと吟味し、その特徴や起こりうる事態をしっかりと予測した上で、日本あるいは個人の状況・環境に合わせたものに作り替えて運用を始めるのが大切で、当然、それなりの努力が求められますが、それは必要なコストだと僕は思います。……なんだか長くなってきたのでサクッとまとめてみましょう。


<まとめ>ジョブ型は食べ物に似ている

まず、ジョブ型雇用とは食べ物じゃありません。成果を重視する雇用システムのことです。
雇用システムは、食べ物と同様に一見美味しそうに見えても、何も考えずに口にすると思わぬ痛みを伴うことがあります。腹痛を起こす前に、まずはしっかり検証することが大切、更に、場合によっては調理が必要なこともあるので要注意、そして、育った環境などで味覚も変わって来るので考慮する。ジョブ型雇用を導入するなら、まずは本当に自分たちにあってるのかを考えていきましょう




画像

関連コラム

<副業について①>
副業解禁から2年が経った2020年。新しい働き方に対応していくには?
既に導入している企業の実態やそれぞれの考え方についてまとめました!

© 2005 SCOUT co., ltd.